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僕のNSP 日記~其の101

公民館に着いて楽器をセッティングし舞台から客席を見下ろしながら僕は深い思いに浸っていた。家族が一家離散した事。放火犯人と疑いをかけられ自殺をしようと思い悩んだ事。素敵な彼女が出来た事。NSP と出会いこうしてコンサートを開こうとしている事。15歳

にしちゃ濃いな~って。

 

僕のNSP 日記~其の102

開演時間はたしかNSP のサークル名にあやかって2時10分だったと思う。3百人くらいは集まっていた。1曲目は2週間前に聞いたばかりの「ひとりだちのすすめ」まだ浸透していないけどNSP 普及委員としても生まれ育った栗原から一関に行く自分にむけたメッセージソングにもしたかった。

 

僕のNSP 日記~其の103

2曲目は「あせ」僕がギターを弾いたりベースを弾いたりで場所を右端から左端と移動を繰り返すというコピーバンドあるあるだった。「新青春、いい、おひるねの季節、ちょうちょ、昨日からの逃げ道、コンクリートの壁にはさまれて、さようなら」そして「ひみつのアッコちゃん」

 

僕のNSP 日記~其の104

NSPは若柳でも絶大な人気があった。でも何故かその中に「ひみつのアッコちゃん」があった。この曲はロックンロールにアレンジして演奏した。遠く離れる彼女への叫びだったような気がする。約1時間弱のステージは大成功に終わった。15歳の僕たちは打ち上げもなく解散した。

 

僕のNSP 日記~其の105

若柳公民館コンサートは宮城県栗原郡での僕の15年間の総決算だった。NSPの歌は自分自身の心の叫びでもあった。母の実家に帰るとギターとベースと少しの荷物を整理して一関に行く準備をした。NSPの新しいLPの「眠くならないうちに」を聴きながら一関でやる事をノートに書いていた。

 

僕のNSP 日記~其の106

天野滋は天才だった。歌を聴いてるとその場面場面が思い浮かんで自分の事のように胸がキュンキュンする。プロになりたい僕にとって一関は終着駅ではなかった。一関の高校に行く目的はあくまで音楽グループのメンバーを探す事だった。僕は天野風に「暗やみ」という曲を作った。

 

僕のNSP 日記~其の107

「暗やみ」

信じて信じられて信じ会える人とあなたは私に言ったじゃありませんか

裏切り裏切って裏切る事が、どんなに見えるものが 不確かなんだと思う

暗闇の中の幻よ忘れない、、、

暗闇の中の幻よ忘れない、、、

家族との離別。グループの解散。彼女との別れを歌にした。

 

僕のNSP 日記~其の108

一関の家は駅からも近い新大町という所の長屋だった。風呂も無く便所は外。小さい頃からずっとそんな家だった。母の実家の隣りの兄さんがベースアンプを貸しててくれると言って車で運んでくれた。週明けには入学式がある。僕はとりあえず「さとう屋楽器店」に向かって歩いていた。

 

僕のNSP 日記~其の109

一関の道は広くデパートも3軒ありなかなかの街並みだった。店に入るとテスコのジャズベースが目に入った。僕が通販で買った安物のベースとは違い大人びた雰囲気のベースだった。店のオヤジは「弾いてみる?」と言ってくれたのでアンプに繋げてお得意の「ちょうちょ」を弾いた。

 

僕のNSP 日記~其の110

「ちょうちょ」のベースはロックティスト溢れたフレーズで自信があった。店の奥でフォークギターを弾いていた同い年ぐらいの男の子がこっちを見て目が合うとニコリと笑った。めちゃくちゃいい音だった。値段を見ると4万ちょっとだった。今のベースの約4倍の値段で高嶺の花だった。

 

僕のNSP 日記~其の111

僕は父の店に行って「進学祝いでベースを買って」と頼んでみた。月賦で買ってくれる事になった。僕はピカピカのベースを持って部屋に戻ると早速アンプに繋いで音を出した。通販のベースとは全く違う音で気持ちよく弾いていると壁が「ドン」を音を立て「うるせー!」と怒鳴られた。 

 

僕のNSP 日記~其の112

僕の家は長屋スタイル。屋根続きで隣りとは薄い壁一枚。お隣さんはその筋の人が住んでいた。父から聞いたら引っ越してすぐの時期に手錠をかけられ刑事に連行される場面に出くわしたらしい。青春時代は怖いもの無しヤク◯が怖くてバンドが出来るか!とベースを弾くのも命懸けだった。

 

僕のNSP 日記~其の113

ベースを買った次の日は高校の入学式だった。岩手県立一関工業高校はなんと試験に落ちた一関高専の隣りにあった。これから毎日通学のたびに挫折を味わうのだ。僕は自転車で高専を通り過ぎるとため息をつき学校についた。僕の中学からは僕だけの入学という孤独と挫折の一日だった。

 

僕のNSP 日記~其の114 

入学式と集合写真を撮りその日は下校した。自転車で一関駅に行き公衆トイレで用を足してると隣に来た男の子と目が合った。「あれっ君は?」その子はニコリと微笑んで「昨日さとう屋楽器であったよね?あのベース買ったの?僕は高専の一年生の岩地勝、今日入学式だったんだ」

 

僕のNSP 日記~其の115

「へぇ高専なんだ、僕は高橋恭司、工業一年生今日入学式だったんだ。昨日ギター弾いてたよね?」「恭司君はベース弾いてたよね?」僕はいきなり「バンドやらない?」「いいね、やろう!」入学式の日にメンバーを見つけた。すぐに岩地君の家に行って彼の弾くギターを聞いた。

 

僕のNSP 日記~其の116

今まで知り合った誰よりも上手かった。3フィンガー奏法は僕より遥かに上手く2フィンガーも弾けクラッシックギターも何曲か弾いてくれた。「岩地君はNSPは好き?」「もちろん高専に入った理由もそれだよ」僕も合格してれば同級生だったはず。とにかく理想のメンバーに出会えた。

 

僕のNSP 日記~其の117

僕たちはすぐに僕の家に向かった。僕の家にはギターもベースもあったからすぐにセッションになった。NSPの曲はほぼ完璧に出来た。僕はギターに持ち替えてオリジナルを歌って岩地君に聞かせた。何曲か歌い終わると岩地君が「僕たちきっとNSPみたいになれるよ」一関の奇跡だった。

 

僕のNSP 日記~其の118

ふたりは駅前パロマにコーヒーを飲みに行く事にした。店に入ると光彦が「おっ久しぶり、一関にいつ来たの?」「先週。紹介するね、岩地君、グループのメンバー」光彦は僕と同い年の二人と大人二人のキャロルやダウンタウンブギウギバンドのコピーバンドのドラマーだった。

 

僕のNSP 日記~其の119

光彦のバンドは全員リーゼントで白のツナギを着た不良スタイルのロックンロールバンドだった。僕も中2からキャロルは大好きだったけどコピーじゃなくオリジナルをやりたかったからNSPに舵をきっていた。パロマでELPや洋楽のレコードをかけては3人で音楽談義で盛り上がった。

 

僕のNSP 日記~其の120

「あとはギターをもう一人探さないとね。岩地君、誰か知らない?」「僕の関中にはいなかったけど桜中にギターがめちゃくちゃ上手いヤツがいるみたいだよ。桜中の友達に聞いておくね」そんな話しをしていると光彦が「週末にサンダーホールに行かない?」「えっサンダーホール⁈」

 

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