top of page

僕のNSP 日記~其の121

水沢という町と一関にあったダンスホールで地元のロックバンドとかが出演している良い子は行かない不良の溜まり場みたいな場所だった。「そんな店ならギター弾く奴とも出会えるかもね」若柳公民館コンサートから約1週間での出来事だった。夢は物凄いスピードで叶って行った。

 

僕のNSP 日記~其の122

僕にとっては高校に通うなんてどうでも良かった。とにかく音楽の夢へ、そのためなら何でもしようと。岩地君が高専生なので諸々の情報は入るし、光彦からはバンドやイベント、コンサート、洋楽の新譜の情報もくれるし上京した天野くんとも連絡が取れる最高のネットワークを得た。

 

僕のNSP 日記~其の123

僕の高校生活、音楽活動を後押ししてくれたのが「NSPⅡ」だった。僕はこのLPが大好きだった。これから出会うだろうギターは歌が歌えてNSPファーストは全部弾けて「コンクリートの壁にはさまれて」が弾ける事が必須条件だった。そんな奴はまずいない。だってそれはプロ級だから。

 

僕のNSP 日記~其の124

僕は毎日学校から帰ると岩地君へ電話してから岩地君家ちに向かい練習をした。各々練習してるせいか二人の練習はあまり時間が要らなかった。僕たちは出会って1週間でNSPの2枚のLPの目ぼしい曲のコピーは終わりオリジナル曲のアンサンブルに移行していた。僕はアルバイトを探した。

 

僕のNSP 日記~其の125

中学時代に若柳のNowで手伝った事があるので喫茶店をさがした。光彦に言ったら「ウチでバイトするよりNSP関係ならYAMAがいいんじゃない?今から一緒に行こう」駅から5分ほど歩いた場所に「YAMA」はあった。NSPのメンバーがステージで歌った事があるというフォーク喫茶だった。

 

僕のNSP 日記~其の126

光彦の大人顔負けの行動が出来る事に憧れた。僕は面接に受かり岩地君との練習とアルバイトを交互にする事にした。アルバイトを終えて帰る頃には一関は夜の灯りに彩られる。天野くんも同じ景色を見て歌を作っていたんだ。「どうやら 通りの灯りもついて 星が出てきたかしら♪」

 

僕のNSP 日記~其の127

 

一関サンダーホールは大町の地下にあった。かなりの大音量での生バンドの演奏に僕らは興奮した。当時はグランドファンクレイルロードが人気でカバー曲を演奏していた。僕も早くステージに立ちたい。そんな思いで暮らしていた時父のうどん屋で岩手日日という新聞にNSPを見つけた。

 

僕のNSP 日記~其の128

『NSP凱旋コンサート7月9日一関文化体育館』の広告写真はグループサウンズがよく着ていたビートルズのサージェント ペパーズの様な格好だった。かなりの衝撃を受けた。一関でNSPのコンサートが生で観れる喜びと衣装のダサさの驚きだった。コンサートまではひと月ちょっとだった。

 

僕のNSP 日記~其の129

父のうどん屋のお品書きを書いてくれる看板屋さんがうどん屋がある福原デパートの向かいにあった。新しいメニューのネームプレートを注文しに行くと「君いつもギター持ってるけどバンドやってるの?」と看板屋さんのお兄さんに聞かれた。奥にはNSPの立て看板がズラリと並べられていた。

 

僕のNSP 日記~其の130

「ウチでバイトしてくれたらNSPのコンサートに入れるし、リハーサルから入れるよ」「えっ、リハーサルから⁈バイトやらせてください」バイトで何をしたかの記憶は全くないけど一関一高の夜間に通う20歳の吉本君という人とすぐに仲良くなり何故か90ccの壊れたバイクを貰った。

 

僕のNSP 日記~其の131

7月9日は平日だったけど学校は当然休んだ。ズンケというあだ名の工業高校の同級生の家が高専の近くで下宿をしてる関係で一緒に一関文化体育館に向かった。会場に入るとサウンドチェックが始まっていてベースの平賀くんがステージ下にいてベースを弾いていた。「あっあの音だ!」

 

僕のNSP 日記~其の132

「NSPの音だ!」憧れて毎日コピーしてるベースだった。もう夢のひとつは叶っていた。間近に見ればどのポジションでどう弾いているかも観察出来る。ズンケは僕に「天野くんを紹介するよ」大概こういう事を言う奴は嘘つきやハッタリが多い。楽屋の扉を開けると天野くんがいた。

 

僕のNSP 日記~其の133

「天野くん、こいつ恭司って天野くんに憧れてギターやってて曲も作ってるんです」そうズンケが言うと「ねぇ何で皆んな同じ様なシャツ着てるの?」と天野くんははにかんで言った。心臓はバクバクのまま「あなたのLPの写真の格好を真似てるんだよー!」と言えず心の中では叫んでいた。

 

僕のNSP 日記~其の134

憧れの人と会うのも憧れの人と話すのも初めてで夢の中でしかなかった。想定もしてなかったから何一つ言葉も出て来ずそこからコンサートまでの記憶がないのだ。2枚目のLPからも数曲演奏して「明日発売になる新曲です」と「夕暮れ時はさびしそう」を演奏した。初めて聞く曲だった。

 

僕のNSP日記~其の135

僕はズンケと岩地君と3人で観ていた。最後の曲「さようなら」のエンディングと共に緞帳はゆっくりと落ちてコンサートが終わり体育館の照明がつき明るくなった。「君が恭司君?ギターを探してるって聞いたけど」タンクトップにジーンズの銀縁メガネの少年は僕に向かって言った。

 

僕のNSP 日記~其の136

「君は?」「僕は一関一高の菊下進、ギターをやってる」なんと彼はケース入りのギターを持っていた。僕は「桜中のギターで有名だった?」「きっと僕の事だよ」

コンサートにギターを持って来る心臓に驚いた。そしてNSPのコンサートが終わった瞬間にメンバーが揃う運命に歓喜した。

 

僕のNSP 日記~其の137

NSPのコンサートの興奮と自分達の展開に胸の鼓動が治らずにいると岩地君が「駅前に『レモン』というスナックがあってそこに楽器もアンプもあるから行ってみよう」と言った。僕たちは3人で「レモン」に向かった。もちろん喫茶店とは違い高校生が入っていい店ではなかった。

 

僕のNSP 日記~其の138

岩地君にはバンドをやってるお兄さんがいてその顔で入れた。店にはカウンターにひとり女のお客さんがいた。カウンターの中にいたマスターみたいな人が「何にする?」

と聞かれたので全員「レスカ」と答えた。マスターは「全員⁈」と言いながらレモンスカッシュを3つ作り始めた。

 

僕のNSP 日記~其の139

マスターは「君たちバンド?」僕たちは出会って10分も経ってないのに「はい、僕ら第二のNSPって呼ばれてるんですよ」饒舌ハッタリは超一流だった。「演奏してくれたら飲み放題にするよ」マスターの言葉に目を合わせた3人はステージに上がった。そしてギターとベースを手にした。

 

僕のNSP 日記~其の140

僕は菊下君に「『コンクリートの壁にはさまれて』は弾ける?」そう言ったとたん彼はいきなりイントロのギターを弾いた。さっき本物を聞いてきたばかりの少年3人はNSPになりきり演奏が始まった。僕は歌いながら「こいつめちゃくちゃギター上手い」と思いながらベースを弾いていた。

 

bottom of page